先日、豊田市の博物館と美術館に行って来ました。博物館の「深宇宙展」では新しい宇宙に関する知見を色々と知ることが出来学びがありました。光年単位の宇宙の世界では地球も宇宙では点の一つでしかない無限ともいうべき世界があることを実感し、我々が日々悩むことも宇宙レベルでは些末な事なんだなぁと思いました。
一方、隣の美術館では「高島野十郎展」が開催中ですが、彼は月や太陽を描いた作品も沢山描いています。彼はお世話になった方に送るために、その人のことを思いながら一枚一枚違っ蝋燭の絵を沢山描いています。彼は「天体までのきょりは言語を絶す、眼前一尺のきょりも又然り」と述べていますが、蝋燭を今は炎を燃やしていてもいつかは消えて無くなる「その人」の象徴と考えると、彼の言葉からは「人と近くで接していても相手との距離は宇宙程ある、何も分かっていない」と実感します。仏教思想にも造詣が深かった彼は、身近な風景を描きながら実は慈悲の心で「心の宇宙」を描いていたのだと思いました。
偶然なのか意図的なのか分かりませんが、外的な「宇宙」と人間の内的な「心の宇宙」を表現する絵画の展覧会を並立して開催されていた豊田市さんの企画力には脱帽します。
高島は「月ではなく闇を描きたかった。闇を描く為に月を描いたのです。」とも語っています。月は闇の中に開いた一転の穴(突破口)とも解釈できます。我々精神科医は患者さんの鬱の心の闇の中に一点の明かりを灯し、何らかの突破口を開く様な姿勢で医療に取り組みたいと思います。また、精神科診察の世界は患者さんの「心の宇宙」という無限の内的世界を読む医療の中でもある意味最高に深い分野であり永遠に極めることが出来ない医の道だと思いますが、少しでも上達出来る様に日々努力したいと思っています。

コメントをお書きください