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柴刈りの日々

 漢方薬の成分の一つに「柴胡(さいこ)」があります。セリ科の植物の根を乾燥させた物で、メンタルクリニックでは精神不安や不眠などに頻用処方します。一方で「柴(しば)」とは山野に生える小さな雑木や枝のことで、両者には一見全く関係が無いです。しかし、私は以前から柴胡の「柴」の字に意味があるのでは?と思っていました。

 桃太郎の物語にもおじいさんが山に柴を刈りに行く話が出て来ますが、それは燃料として使う為にを刈り取りに行くという意味です。現代では芝刈りの必要は無くなりましたが、燃料としての電気やガスやガソリンは生活に不可欠であり、食料も人間の身体を動かす燃料と言えるかと思います。「現代の燃料」を得る為にはお金が必要です。我々が日々働いているのは当たり前ですが生活を回すお金を得る為です。その「現代の柴刈りの日々」には苦労が伴い、悩みもあり一喜一憂の日々だと思います。その緊張を解す眠くならずに服用できる安定剤が「柴胡」の入った漢方薬(柴胡剤)のグループです。

 柴胡剤は、昔は家族の為に苦労して働くお父さんを応援するイメージの薬でしたが、今は若い人も女性にも薬の強さを選んで幅広く処方しています。私自身の日々も柴刈りの日々の連続で、診療に疲れた時などに柴胡加竜骨牡蛎湯や抑肝散を服用することがあります。

 柴胡剤は現代のストレス社会では不可欠な処方であると思います。柴胡剤をお供に困難な毎日を生き抜いて行きましょう!

☟柴胡(サイコ) クラシエ製薬ホームページから引用