良い夢みたいね

 絵画の展覧会をよく観ると、睡眠や夢をテーマにした絵が意外と多いことに気が付く。画家は、それぞれの個性で心の安寧を表現している。

 メンタルクリニックの外来では、眠れない人にいかに良い睡眠を得られるようにするかが精神科医の腕の見せどころである。睡眠薬を出すくらいなら他の科の医者でも出来るが、それだけでは良質な睡眠を得られないことが多い。さんざん、かかりつけの内科などでベンゾジアゼピン系の睡眠薬を投与されて依存形成ができた後でも、よく眠れずに転医されて来られると、依存のない薬への切り替え作業からして手間取り最初から一苦労である。依存の無い睡眠薬のデエビゴやベルソムラも悪夢の副作用が多く、それを出しておけば良いという簡単なものではない。なるべく睡眠薬以外の薬を使ってよく眠れるようにするか?は、精神科医ならではの専売特許であり飯の種でもある。妙薬を上手く配合できると「技が決まった」気がして嬉しい。

 怖い夢や暗い内容の夢が明るい内容の夢に変わった時や、「あまり夢を見なくなった」と言われる時は病状は好転する目印である。いつも患者さんに言っているのは「どうせみるなら良い夢をみたいね」である。

マティスの『夢』 ☟

ピカソ 『赤い枕で眠る女』☟