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神泉ワールド

 連休中に「徳岡神泉展」に行って来ました。写真では分からない実物の絵のみが持つ素晴らしさに圧倒されました。ギャラリートークでの神泉についてのお話もとても参考になりました。

 精神科医としての私が気になったのは「神泉の人生の物語」です。神泉は早くから優秀な画学生として学校の賞を何度も受賞するなど栄光の画学生でしたが、自信を持って出した作品が当時の「文展」という大規模展覧会に3年連続で落ちたことにより自信を打ち砕かれ、死の淵にたたずむ程の絶望感を味わい京都市内の寺に参禅しましたが心は晴れず、京都を逃げる様に各地を放浪した後、結局は行先のない汽車の切符を買い、偶々行きついた先が富士山麓の静岡県の藤川町岩淵でした。着いた頃の精神状態はかなり荒れていた様で有名な《狂女》と言う作品を描いていますが当時の心境を現していると言われています。

 岩淵で縁を得て結婚し、娘を授かることですさんだ気持ちが徐々に変わり、絵も明るい色調になり徐々に本来の実力が蘇り、4年後には京都に戻り後の大活躍に繋がったという「栄光と挫折と再生・復活の物語」です。

 神泉の人生から学んだことは、我々凡人も挫折することもあるでしょうが、そういう時には、場所を変え新たな人の助けを借りれば再生・復活もあり得るということです。会社の事で悩んでいる人、家庭の事で悩んでいる人も大きな世界から見れば「ちっぽけな悩み」です。思い切って、そこから抜け出してしまえば新しい世界が見えて来るかも知れません。悩んでいるいる人に是非観て貰いたい絵の数々です。

 神泉は《蕪》の絵について「唯一つの蕪の中に宇宙のあらゆるものが凝集している」とも述べています様に、神泉の絵には独特の深みがあり、展覧会は独特の宇宙観まで感じられる神泉ワールドの世界です。長久手市の『名都美術館』で5月14日まで開催中です。

 

 

《仔鹿》1961年年 東京国立近代美術館蔵

《蕪》1961年 京都国立近代美術館蔵☟

《筍》1960年 個人蔵  筍が宇宙船に見える人もいるとのことです☟

 

参考:『狂女(白痴の女)』1919年 東京国立近代美術館蔵☟  展示なし