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銭薬は仙薬?

精神科の治療は、病名はともかくとして不眠症にどう対処するかが勝負所である。デエビゴを始めとした最新の睡眠薬が一発で決まれば問題ないが、症状レベルがもっと重い人の不眠もあり必ずしも簡単には行きません。最近のルールでは睡眠薬は2剤までしか処方できず、それでも効かなければ抗うつ剤を足したりベンゾジアゼピン系安定剤を足したりしますが、それでも効かない場合は徐々に治療が迷走して行くことになります。悩みに悩んだ時にどうするか?私の場合は、60年以上前からある古いフェノチアジン系抗精神病薬を少量追加投与するとよく眠れる様になることを度々経験しています。

 私が好きな薬の一つヒルナミンちゃんと「躁病やうつ病による不安・緊張」にも保険適応があります。ヒルナミンは5mg錠が薬価が1錠5.7円。普通は5mgを1錠処方しても強くて翌日残ってしまうので、砕いて10分の1錠以下の1回量で投与することが多いです。そうなると1回あたりの処方薬価は銭単位になります。3割負担や1割負担では、その薬の患者さん負担はいくらになるか?後発品メーカーが薬を売る気力も出ない程の究極の安い薬です。

 私の30年以上の精神科臨床経験では、昔は良く使われていたけど今は殆ど名前を聞かない滅びて行った薬も多々ありますが、長い時間を経ても今に残っている薬にはやはり意味があります。その薬の存在意義を見抜き、使用量をさじ加減して上手く使いこなすことが治療上肝要なことであると思います。銭薬は仙薬(効き目が著しい薬)につながると思います。