今年もあと残り僅かになりましたが、当院で一番残念だったことは自ら死を選ばれた方が数人おられたことです。希死念慮を訴える方も精神科の性格上多く、患者さんから発せられるサインを見逃さないようにはしていますが、全くサインがなく既遂に至る方もおられ、連絡を受けた時にはまさに痛恨の極みです。今後、診療技術を少しでも向上させる努力を積み重ね、自殺予防に努めて行く所存です。
パスカルは「人間は考える葦である」という言葉を後世に残しました。この言葉の意味は「人間は自然の中では弱い存在であるが考えることによって宇宙を超える」であり、「考える」ことの重要性を示した名言であると理解しています。しかし、精神科の診療を長年やっていると、本当に葦の様に脆(もろ)い人がおられ、ちょっとしたストレスが加わるだけでも、あっけなく自殺企図に及ぶ人がいますので、私にはこの名言の中で「葦」という言葉の方が強く響きます。
早熟な天才で多方面で優れた業績を残したパスカルも39歳の若さで亡くなっており、あれこれ考え過ぎて頭でっかちにならない方が長生きするのには良いのではないか?とも思います。与えられた命以上に大事なものはないです。来年は当院の患者さんで自死する方が一人も無いように務めたいと思います。
コメントをお書きください