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薬の匙加減と心の匙加減

臨床にとって、得意な薬をいくつか持って自分の手の内に入れておくことは大事であると思います。薬の錠剤は規格が限られた数しかないので普通は錠剤の倍数で徐々に足して行きながら経過を診ますが、その1錠の量が人によって多すぎる場合は錠剤でもわざわざ粉砕して投与する場合があります。

例えば、鬱症状があり夜間不眠や食欲不振を伴う場合によく使うミルタザピン(リフレックス)の様に最初から1錠投与すると眠くて翌日起きられないことが多い薬は、最初はごく少量から開始することが多いです。寝せるという効果と眠気が残るという副作用は表裏の関係にあり、その微妙な間を狙って薬の量を調整するのが、職人的な薬の匙加減です。それは、なるべく副作用を少なくして、一つの薬で心と身体に同時に効かせたいという心の匙加減に基づいています。